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研究

キーワード:植物環境調節,植物工場,環境の最適化,画像計測

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植物工場に最適化した光環境の開発
 完全制御型植物工場の光技術は、第一世代では高圧ナトリウムランプが用いられていました。これは光変換効率が高いという理由からですが,ランプからの発熱のた め植物から一定以上の距離を開ける必要があり、1フロアに1レイヤの栽培面しかとることができず,土地利用効率を上げることができませんでした。そこで第二世代では蛍光灯が用いられる ようになり近接証明が可能となり多段化にも成功しました。これによって,土地利用効率が格段に向上し地価の高い大都市の近郊あるいは大都市内でも植物工場の設置が可能となりました。大都市は大消費地でもあるので,この近郊やその内部で生産できることは輸送にかかる経費を削減するメリットがあります。ただ,光質に関しては,蛍光灯はもともと人間が使用することを念頭に開発されてきたので,この光スペクトルはかならずしも植物栽培に最適化されたものではなく,光合成に不要な光成分も多く含まれています。これらの光は最終的には 熱となり栽培室の熱負荷が増加し、これを除去するためにさらにエネルギーを投入しなければならないという無駄が発生しています。そこで、LEDを利用して光 合成に必要な400~700nmの波長領域のみの光源を有する植物工場システムを開発するところがこれまでの技術とは異なる点です。
 このようなシステムの開発課題としては、どのような中心波長を有するLEDを組み合わせて400~700nmの光を創出するのかという点が挙げられます。こ の波長領域内は光合成に有効な波長領域であると同時に、形態形成に重要な役割を果たすクリプトクロームとフィロクロームの光受容体の吸収波長の一部を含ん でおり、これらのバランスも成長に大きな影響を与えることが知られています。そこで、クロロフィルの吸収スペクトルに最も近くなるスペクトルを数種の異なる 中心波長を有するLEDで作成し、これをベースとして光受容体の吸収波長の混合割合を変えた波長を付加し、植物の生長量を定量的に評価しています。

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画像計測による植物の環境応答解析
 花壇苗を含める花卉は、国民の日々の生活に幅広く利用されており、生活に潤いと安らぎを与えると共に、文化、経済にも重要な役割を果たしてます。また、農業粗生産額の6%以上を占めており、農業の重要な部門となっています。
 花壇苗の生産・消費量は、近年ガーデニングブームが背景となり右肩上がりの増加傾向にありますが、最近では景気の低迷も影響し横ばい傾向になっています。市場が産地 に対して求めるものはさまざまですが、そのなかでも苗の高い品質が上位にきます。高い品質の苗には、徒長しておらず、コンパクトでボリューム感のある草姿の 苗が挙げられます。このニーズに応えるため従来生産者は、農薬の一種であるわい化剤を利用してきました。しかしながら、農薬取締法改正によりわい化剤の使用制限 が厳しさを増し、わい化剤を利用して理想的な草姿の苗にすることは難しくなりました。
 植物を栽培する際にはさまざまな環境要因がありますが、本研究では、温度環境であるDIFを利用したわい化剤代替技術を開発することを最終的なゴールとし、そのための基礎的 知見を得ることを目的として,主要花壇苗の下胚軸を対象とした異なるDIF条件下における伸長量の経時的変化を、非接触で連続的かつ自動的な計測方法としてCCDカメラを用いてとらえて解析し、そのうえで1日あたり及び明暗期別の伸長量におけるDIFのわい化効果について検討しています。

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遺伝子発現を利用した環境調節法の開発
 植物にとっての最適な環境条件を求める方法として、さまざまな環境条件のもとで実験を行ない最適値を探査する手法が一般的によく用いられます。しかしなが ら、このような方法では、適値は得られるものの最適値かどうかは不明な場合が多いです。制御の言葉でいうとローカルミニマムに陥っている可能性が否定でき ないということです。そこで本研究室では、環境に応答する植物内の遺伝子発現量レベルに着目しています。具体的には伸長成長をつかさどるホルモンであるジ ベレリンを合成する酵素の発現レベルを調べ、これを常に高いレベルに維持する環境条件(つまり、これが伸長成長を最大化する最適な環境条件)を見出そうと しております。リーフレタスを対象として、画像計測から求めた実際の伸長成長量の関係と、ジベレリン合成酵素の発現レベルの解析結果を図3に示します。こ れによると暗期開始後約30分でジベレリン合成酵素の発現量が最大となり、さらにその約60分後に実際の伸長量が最大になっていることがわかります。この ような実験を行なうことによって、通常の栽培環境では一日のうちで明期と暗期は1回ずつしかありませんが、たとえば短い明期と暗期を繰り返すことで伸長量 が増大させることができる可能性があります。

植物成長のソフトセンシング
 温室などで花卉の苗生産(たとえば、ペチュニア、マリーゴールド、パンジー、ビオラ、ビンカ、インパチエンスなど)をする場合、植物の成長をコントロール するために温室の温度を制御します。しかし、植物の成長には植物温度(茎頂部温度)が大きな影響を与えます。ここで、温室の温度と植物の温度が同じであれ ば問題ないのではないか、という疑問が浮かんできます。その実測例が図1です。この図では植物の温度が低くなっていますが、環境条件では逆の場合もありま す。つまり、いくら温室の温度をうまく調整しても植物の温度がどうなっているのかは不明です。そこで、伝熱工学の理論やニューラルネットワークを応用し て、営利栽培温室で測定されている一般的な環境要因から植物温度が精度よく推測できるモデルを構築しました(図2)。このモデルの出力値を温室環境制御の ためのフィードバック信号として用いることで、植物の形態的特長量をコントロールすることが可能となります。

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