農業システム工学分野の研究領域について

当研究室の歴史を見ても分かるように,当分野の研究の主幹は農業機械学の中でも“トラクタ工学”でした.この流れは現在“テラメカニックス”研究に引き継がれて,脈々と続いています.テラメカニックスとは,車両や機械と地盤との相互作用を研究するもので,いわば機械工学と土質力学の境界領域といえます.実用的にはトラクタの走行装置や耕うん部など土を相手にして仕事をする部分の合理的設計に結びつくものですが,土の力学的性質が多様かつ複雑であることから,上述の相互作用をいかに解明するかといった科学的な研究に傾いている面もあります.

現代社会における人類生存のための焦眉の課題は,「環境」・「エネルギー」・「食料」に関する問題です.私たち生物生産工学の立場から,これらの問題解決のための研究に取り組んでいます.すなわち,環境問題に対してはノーエミッション車両の開発,エネルギー問題に対処するバイオマスエネルギーの実用化,食料の安定かつ低コスト供給のための最適化を図るシステム工学的研究などを鋭意遂行しています.

さらには,植物および生育環境を含めた植物系を対象とし,植物と各環境要因との相互作用を計測解析することにより植物系の動的および静的モデルを構築する研究を行っています.これは工学的な観点からの植物へのアプローチです.たとえば環境条件をシミュレーションすることによって,根系の生長や病気の拡散現象を再現し,環境条件を動的に制御することにより効率的な生育環境を確立したり,最適な防除作業計画の構築を目指す研究も行っています.

このように当分野の研究領域は広範に亘っていますが,いずれも工学(Engineering)が基礎にあり,ハードウェアとソフトウェアが有機的に結合して社会に役立つ研究を目指していることに変わりはありません.